ルックを倒した。
つい昨日のことだ。
ヒューゴは間違っていないと、今も自信を持って言える。ただ、彼を倒すのはあまりに悲しすぎた。
世界の未来を破滅させるため、自分の魂を捧げる決意。彼の詳しい事情は知らないから何が彼をそこまで駆り立てたのかはわからないが、そんな決意、悲しすぎた。できるなら、救いたかった。
ああ考え出すと止まらない。
ヒューゴは草原で一人、頭を掻き回した。
精神的に参っている。
紋章が騒ぐのだ。制御しきれずにいる。だからこうして、万が一に備えて人気の無い草原に一人でいるわけなのだが。
溜め息と共にゆったりと瞬きをした。
「ひっ……」
開いた目に映ったものを見て、小さく悲鳴をあげる。世界が、灰色だ。
嫌だ、嫌だと首を振って後ろに足を引いた。
幻に決まっている。弱った自分の心が作り出した幻だ。
言い聞かせながらも息が荒くなっていた。
(熱い……。右手が、熱い)
紋章が鈍く光って、力を放出したがっているのがわかる。もうヒューゴには暴走を止められないと、なんとなく予感した。
ならばせめて最小限に食い止めようと集中した。
「ヒューゴ」
突然掛けられた声に、ヒューゴは勢いをつけて振り向いた。
世界はいつの間にか色を取り戻している。
おかげで彼の鮮やかな赤がよく見える。
「来るな!!」
ああ、でも、間に合わない。
右手から力が放たれる。
ヒューゴは叫んだ。何を叫んだのかはわからない。
意味の無い絶叫かもしれない。絶望の慟哭かも。
或いは、その人の名前だったろうか。
───彼のいない世界なんて、居たくない。
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